もっと都心や大きめの繁華街ならば、クリスマスの方をこそ前面的に押し出しての華やかな。ディスプレイだのイルミネーションだのと凝った装いに塗り潰されもするのだろうが。小さな街の駅前商店街レベルだと…どうしても。数日後に控えている年末への準備はいかがという、歳末大売り出しと合体してしまうのは否めなく。角ごとにはためくノボリの赤が、果たしてXmasの赤なのか、歳末赤札の大売り出しを示す赤なのか。
“ま、どっちにしても品数が増えるのはありがたいですが♪”
鷄の丸焼きハーブ風味を作るにしても、韓国風におこわを詰めたサムゲタンを煮込むにしても、品のいいのがたっぷりと取り揃えられているものだから。お料理上手な島田家のおっ母様こと、七郎次さんには大いに助かるところ。男所帯だとはいえ、相変わらずがっつり食べてはくれない次男坊と、晩酌の方がメインの御主と、量より質を求められている…ような気がするご家庭なので。歳事にかこつけた新メニューに挑戦するのもいいかななんて、昼下がりの商店街をのんびりと歩んでおれば。
「…。」
「おや、早かったですね。」
とうに冬休みに入っていたものの、部活があっての毎日の登校に変わりはなかった次男坊。さっき到着の快速に乗って帰って来たのだろう。これもまた相変わらずの気配も薄いまま、大好きなおっ母様を雑踏に見つけての、すすすっと駆け寄って来てくれた久蔵殿で。今日は、年末も押し迫って来たのでと、大掃除だけの予定で午後からの登校。それがこうまでの早く帰って来たのは少々想定外だったのだけれど、
「…女子が、増えていた。」
「こんな時期にですか?」
金色の綿毛に色白な頬。それは繊細で端正なお顔に座るは、上等な玻璃玉みたいな紅の瞳。ごくごく一般的な制服姿でも、すらりとしなやかな若木のような肢体は、落ち着いていて品のある態度や所作とあいまっての印象的で。一体どこの国の王子様かしらというような、夢見るような風貌をしておいでだってのに。実は実は、最寄りの県立高校の、剣道部所属の凄腕の剣豪殿だったりし。部内での選抜戦であっさり全勝しての代表となったのを皮切りに、全国大会を制覇しもした、その筋では今年の話題を総なめにした天才児。そんな存在の彼が…多少ほど奇行がなくもないとはいえ、休みに入っても律義に出てくるものだから。練習は勿論のこと、部室だって男女で別のはずなのに、いやに手伝いの手が多かったらしくての、あっと言う間に掃除も整頓も片付いたので、それでの早めのお開きとなったらしい。
「じゃあ、買い出しに付き合って下さいませんか?」
「…。(頷)」
承知と頷き、早速にも…おっ母様が下げていた、カボチャと青菜とゴボウにレンコン、八百屋でのお買い物の詰まった袋を、白い手が受け取る。年末への買い出しはまだ早いのですけれど、
「今日はクリスマスイブですし、何か御馳走にしましょうね。
鷄は照り焼きがいいですか? それとも唐揚げの方がお好きですか?」
「…。」
「そうでしたね、じぶ煮がお好きでしたね。
それと、フライドポテトよりも小芋の煮付けでしたよね。」
「♪♪♪」
どうも何だか、最年少の彼の好みが一番渋いので、全てを彼の好きなもので埋めてしまうと、クリスマスというカタカナの催しが連想出来ない食卓になりそうな気配。なので、
「ケーキはお好きですものね。
生クリームの美味しいの、予約しておきましたからね?」
「…♪/////////」
あとは、温野菜のサラダに、豚肉で茹でたインゲンを巻いて岩塩でソテーした焼き物と。ポタージュスープ…では合わないかしら、具だくさんのけんちん汁の方が、バランスはいいですかねと。指折り数えてメニューは決定。香の物とお茶を、それぞれに行きつけのお店で買い求めれば、
「おや、久蔵さんも一緒なのは久しいねぇ。」
人の善さそうな女将さん、好きだって言ってたろと、お使いものらしき銘菓のお饅頭、こっそりと手渡しして下さる気安さに、
「…。/////////」
どぎまぎしつつも…かたじけないと。真っ赤になってのお辞儀をするのが愛らしく。居合わせたちょいと年かさの奥様がたを、まあまあ可愛いことと騒がせたりし。ケーキ屋へ寄れば、アルバイトの女子高生たちが日頃の二倍は落ち着きをなくし。店中の商品全部を網羅しているのではなかろうかというほどもの、ご試食品の山を下さるものだから。無下に断るのは一緒にいる七郎次に迷惑をかけないかと思うのか、一応は目礼を返しての受け取るものの、
「…?」
ハロウィンは とうに過ぎたのに? なんでどうして、あの子たちはこんなにも、売り物だろうに菓子を差し出したのかが判らぬと。心からの困惑げなお顔をする久蔵なのが、七郎次にはたまらない。
“な〜んて可愛らしいのだかvv”
これが…夏休みの高校総体や学生剣道の全国大会にて、いきなり現れた無名の一年生選手だってのに、中学生時代から勇名を博していた有力選手らを、バッタバッタと薙ぎ倒した猛者だと言って、誰が信じてくれようか。真夏の体育館を満たしたどよめきには、眉ひとつ動かさなかったうら若き剣豪さん。打って変わって、両手を塞ぐほど増えた大荷物に怪訝そうなお顔をしておれば、
「…?」
「ああ。あれは福引ですよ」
からんからんと、景気のいい鐘の音がして、誘われるように見やった先には紅白の幕。
「先週末から始まってましてね。ああそういえば、久蔵殿には初めてですね。」
ずっとずっと、山奥の大きな屋敷にて育てられていた彼だったから。学校にこそ通ってはいたが、こういった風物詩には触れる機会も少なくて。中途半端に新興の地のここいらのそれなんて、大したものではないのだけれど、それでも彼にはお初なものがまだまだ多い。
「そういや券が結構溜まってました。」
親戚・分家の方々へ、お届けものをしたそのお買い物。それで結構クーポンがもらえた。補助券8枚で1回だからと、お財布から取り出した束をひのふのと数えれば、
「おお、凄い。12回も出来ますね。」
明後日からは年末のが仕切り直して始まるとか。だったら今日使ってしまいましょうかとにっこり微笑ったおっ母様に、
「〜〜〜。///////」
意味も判らぬままなくせ、こくりと頷いた次男坊。連れられて行ったは、商店会が設けたらしき小さなテントで、
「さあさ、引いてって下さいませな。」
「まだまだ大きいのが残っておりますよ?」
はっぴ姿の奥方たちが、逃がさないぞとも聞こえかねない、お元気な声をかけて下さる。長テーブルの向こう、そちらも仮設だろうひな壇の上には、なかなかに華やかな賞品の数々が積まれてあって。
「おや、特賞のハワイ旅行は出たんですね。」
「ええ。それも ついさっき。」
商店街の各店舗から提供された賞品とは別口、積み立て金にて設けた特賞、毎年結構なものが用意されているのだが、今年は最終日を待たずして当選者が出たらしく、
「何を隠そう、ゴロさんが当てました♪」
「おや、ヘイさん。」
そちらもお買い物か、それにしては…今から何処に登山でしょうかと、ついつい訊きたくなるよな、リュックサックを背負った小柄な隣人。平八さんがお声をかけてくる。
「ゴロさんが…って、福引、引かれたんですか?」
訊けばこっくり、大きく頷くお隣りさんで、
「あれでゴロさん、くじ運は途轍もなく良いんですよねvv」
じゃんけんだって負け知らずですし、懸賞のはがきはもとより、ラジオのリクエストに出したはがきも必ず読まれる、くじ運のよさでと。胸だけでは足りないか、腹まで張っての大威張りをするエンジニアさんだったけれど、
「いや、それはくじ運ではないような…。」
ですよねぇ。(苦笑)
「出発の日程は春休みの混雑を避けた二月なんですが、ウチにはその方が持って来い。」
なので、留守にしますがどうかよろしくと、来年の話で今から盛り上がりかかっていたところ、
「…。」
「あ、はいはい。」
我らは引かぬのかと、お連れさんからハーフコートの二の腕をちょいちょいと引かれ、おや、関心が高まったかなと、苦笑をこぼしたおっ母様。そこで、
「それじゃあ久蔵殿が引いて下さいな。」
券は係のおばさまに手渡ししてから、だが、運命の女神をエスコートするのは、次男坊へと託した七郎次だったりし。
「?」
「いえね、実はアタシも勘兵衛様も、くじ運はとことん悪いのですよ。」
思い出すのも憂鬱になるやら肩が凝るやらな あれもこれも。貧乏くじとの縁の深かったことと言ったら、枚挙の暇がないほどで。だからして、この福引も、知ってはいたが関係ないと眼中においてはいなかった。
「それに、こういうものはネ?
その家で一番幼くて、幸運をまだ使っていなかろう、
最年少のお人が引くものなんですよ。」
………ホンマでしょうか、それ。(う〜ん) ともあれ、託されたからには頑張らねばと思ったか、玉の色と賞品の一覧表をちらりと見やった次男坊。初めて見たらしい福引のお道具へ、ちょっぴりと手が迷ったものの、ここをもって回せばいいと教えられてのさてさて。
「…。」
「…お。」
「あれ。」
ビリは八等で赤い玉。なのに受け皿へは、それとは違うのが かたんと落ちた。青いのは…とおばさまたちが一覧表を眺め直して、
「あら、四等のかずのこが当たったわよ?」
「大当たり〜〜〜vv」
よほどに暇だったか、三位以下だのにからんからんと鐘を鳴らして下さって。
「あらあら、買わずに済みましたね。」
助かりましたねと笑って下さったおっ母様に気をよくし、えいと2回目、ハンドルを回せば、
「今度は、緑。」
「緑は…、三等の缶ビール1箱。」
続いた“当たり”に、おおうと皆がついつい沸き立つ。今はやりの発泡酒なんかじゃあない、プレミアム何とかという純正ビール。
「うわぁ、久蔵さんも、なかなかのくじ運じゃないですか。」
「そうですね。」
感心するお声を励ましに、続いて回せば、またまた赤くはない玉が出て、
「白よ、白。」
「白は五等のお米5キロ。」
「あ、いいな〜。」
特選こしひかりですよ、これは羨ましいと。お米にはうるさいお隣りさんがくすすと笑う。それにつけても、
「…こうも連続して当たるもんですかね。」
良いことも、続けば何だか恐ろしい。下手な川柳じゃあないですが、良いことばかりが続くとそのしっぺ返しにどんな凶事が襲うのか、ついつい案じてしまうところが、
「シチさん、あなたA型ですね。」
「大当たり。」
もしかしてヤギ座じゃないですか、知りませんよそんなの。何だか妙な問答が始まった二人をよそに、続いてハンドルに手をかけた次男坊だったが、
「ピンク。」
「えっと、ピンクは六等の洗濯用洗剤半年分。」
「続いては橙。」
「橙、うわ二等の携帯TVゲーム機です。」
「次は…またまた緑。」
「ビール追加っ。」
「次は白、お米ですよ。」
「続いては、おおっと一等、屋外設置用イルミネーションセット!」
よくもまあまあと、外れなしの上位ばかりが続く続く。
「末恐ろしい子だったんですね、久蔵さんてば。」
あぜんとする平八のお隣りで、
「それよりも。」
七郎次が青ざめていたのは、
「こんなところで人生の運を全部吐き出してんじゃないかと、
アタシゃそれが心配で…。」
「シチさん、シチさん。」
それこそ大仰な言いようへ、平八が宥めるように肩を叩いてやったものの。それもまた…彼の親代わりなのだという自覚が強ければこそ、ついつい出た言葉でもあったろう。そうこうするうちにも、奇跡の福引は残すところ1回となり、
「此処までずっと外れなしですね。」
「七等も外れ扱いですか?」
「だって引いてませんしね。」
ちなみに。七等はここの商店街でのみ使えるという100円分の金券で、八等は小さな鈴とマスコットのついた、キーホルダー風ストラップ。それ以外で特等以外を総なめという、とんでもない戦果を上げているにもかかわらず、
「………。」
相変わらずに表情の動かない次男坊。いや、きっと真剣に集中してなさるからあんなお顔になっているのよと、いつの間にか増えていたギャラリーの声が届いたものの、
「…久蔵殿?」
いえいえ、これは見たまんまの不機嫌顔ですと。あっさり見抜いたおっ母様、どうしたことかと傍らに寄れば。
「…。」
ちらとお顔を上げた彼は、そのまま手元近くのテーブルの上を見、ふにゅとその肩をしぼませる。彼の視線が撫でたもの、見逃さなかったおっ母様。最初は“…はい?”とその意味合いが掴みかねたものの、
“…あ、そっか。”
ああと思い出したことがあっての合点がいって。じゃあと、ハンドルを持つ久蔵の手へ、自分の手を重ねた彼であり、
「?」
「言いましたでしょ? アタシはくじ運が悪いって。」
そうと言う割に、にっこり笑ってる七郎次であり。何のことだろ、どういう意味だろかと、周囲が小首を傾げる中で。最後の一投、福引き器ががらがらっと軽快な音を立てたのだった。
◇ ◇ ◇
冬至は先日過ぎたがそれでも、陽が落ち切ってしまう時間帯はまだまだ早くて。吹きつける夜風も冷たい中、家路を辿る道筋沿いに、次々瞬く家々の灯が、何とも言えずの人恋しさをくすぐってくれる。人通りの少ない住宅街のメインストリートを、真っ直ぐ真っ直ぐ。一番の奥向きに見えるのが、愛しい我が家。すぐお隣りにはモダンな外観の車両工房があるというのへ、だが見劣りはしない瀟洒な作りの一戸建て。家人が手入れして復活した庭木が、冬場でも優しい趣きを添えてくれての心から寛げる場所であり。そんなあれこれより何よりも、こうして陽が落ちてからの帰宅を、柔らかな明かりを灯して迎えてくれるのがありがたい。お帰りなさいと、自分を待っててくれる人がいるのだと、それが何よりも嬉しい癒し。キンモクセイとサザンカの茂みが、塀の代わりに連なるポーチ前。家の横手のささやかな庭には、ダイニングとリビングからの明かりがこぼれて…いた筈が。
―― ふっ、と。
自分の帰宅を測っていたかのような、何ともいやなタイミングにて。暖かな色合いだった明かりが突然消えた。
“…え?”
何だ何だ、今のこれ。何かあっての不在ならともかく、今の今まで点いてたものが、こんな間合いで消えるとは。家人の誰かに今の今、何かあったというのだろうか。何とも不吉なと、ついのこととて。玄関前にて立ち尽くせば。そんな彼のやっぱり横手。丁度こっちに面したお隣さんの工房の側壁が、
“…え?”
今度はいきなりのぱぁっと目映く輝いた。何だ何だと、事情が判らぬまま…立ち尽くしたままでおれば、
「ほらほら、久蔵殿。きれいですよ。
あれ、トナカイまでありますね。あれはヘイさんが拵さえたんでしょうか。」
そんな声が聞こえて来たから、
「…七郎次?」
「おや、勘兵衛様。どしました、庭からご帰宅なんて。」
そちらこそ。この寒いのにカーテンも引かず、ついでに明かりを落としておったのはどうしてだと。会社から帰って来たばかりな御主、勘兵衛様に問われたのへと、
「ああ、それがですね。」
古女房殿が楽しげに答えての曰く。彼との色違いでお揃いの、アルパカのセーターが暖かそうにお似合いな久蔵殿が、商店街の福引を当てまくり、されどイルミネーションセットは飾ったところで外から観るもの。ウチでは使いませんねぇと言っていたところ、ヘイさんが
『だったらウチで飾らせて下さいませな』
と、申し出て下さって。
『そちらのお宅の、そうですね、リビングからよく見えるほうの外壁に飾りましょう』
無論、日付が変わる頃合いには消しますよと、そうという約束の元、早速にも五郎兵衛殿と飾り付けて下さっての、
「今さっき、点灯して下さったのですよ。」
「成程。」
説明と同時進行で、お着替えのお手伝いも手際よく進めての、寝室経由で戻って来たリビングには。戸口近くにひょろりとしたスタンドを、窓辺にはクリスマスツリーの電飾をのみ灯した中、その隣人のお二人が増えていての、ささやかなパーティーの準備が整っていたところ。さすがに“ホワイトクリスマス”とは行かなかったし、何よりも町なかなので、降るような満天の星を見てという訳にも行かなかったが。その代わりのように、青やら白やら緑やら、清かに光る地上の星が、それは綺麗に望めるのが何ともいい雰囲気で。
「それでは、素敵な聖夜を迎えたことへ。」
つつがない日々を送れることへのささやかな幸いを祝し、ビールやジュースで満たされたグラスを掲げて杯を空ける。全くの全然、問題や騒動・波乱がなかった1年であったとは言い難いけれど、
「…っ☆」
「ああ、ほら久蔵殿。まだ熱かったんですね。お貸しなさい。」
「久蔵殿は相変わらずに猫舌なのですな。」
「それをまた、シチさんが甘やかすからなかなか治せないvv」
愛らしい家人らが織り成す何とも微笑ましい光景や、隣人との暖かな交流。そんなありふれたものをば、自分の家族のそれとしてこうまで間近に見ておれる日々は、何にも代え難い幸いだとつくづく思うご当主様であり。
―― そういえば。
はい?
問題の福引とやら。久蔵が不機嫌だったからお主が助太刀したというのは、結句どういうことだったのだ?と。身支度の終盤になってしまい、話の結末を聞きそびれた壮年殿にあらためて訊かれて、
「ああ、それはですね。」
七郎次の声にかぶさって、ちりりと小さな音がして。イルミネーションを眺めにと、窓辺へ立っていった次男坊の履いていた、綿パンのポケットから覗いていたのが…いかにも手作り風のマスコット。
「あれって、町内会のバザーの売れ残りなんですけれど。」
お手伝いしてアタシやヘイさんも幾つか作ったもの。それの売れ残りがこたびの景品の中にあったのを、久蔵殿、目ざとくも見つけたらしいのですよ。
「バザーに出した物は、でも、当日は剣道の試合があったからって買いに行くことが出来なくて。それを残念だなとずっと思ってたらしくって。」
それが、そのマスコットが、どういう巡り合わせだか、目の前に現れて。くじを引いての赤い玉が出たら、どれでも好きなのを選んで良いという話。それでと頑張ったのに、
「…あやつの望んだ赤い玉が出なかった。」
「ええ。」
一番たくさん入っていての、しかも11回も引いたのに。赤い玉だけが出なかった。だからのこと、ちょいと機嫌が傾いていた彼だった…という訳で。どうしてもどうしても、お米や御馳走やご褒美よりもどうしても。あれが絶対に欲しかったのにと。もっとずんと小さな幼子みたいに思い詰めての、むうと不機嫌だった次男坊。最後にやっと赤い玉が出たのでと、テーブルの上に無造作に置かれてあったボール紙の箱の中から、いつぞや自分が作った何とも不出来なマスコットを選び出し。これが欲しかったのと打って変わっての喜色満面。頬を染めてまでいた彼を思い出し、
「あんなものをねぇ…。」
小学生でももっときちんと作れるものをと、くすぐったそうに口元をほころばせた七郎次だったものの、
「ねえ、勘兵衛様。
ということは、久蔵殿も、くじ運は悪いということになるのでしょうか?」
「う〜ん…。」
な、なにはともあれ、Merry Xmas! 
〜Fine〜 07.12.24.
*先の連載の間中、そういやシチさんが全くの全然、
電信でのお声以外、出て来なかったのが寂しくて、
それでと構えたお話です。
クリスマスへ間に合わせたくての突貫ものですみません。
あの福引のガラガラって、日本固有のものなのかなぁ?
誰がいつ発明したんでしょうねぇ♪
くじ運が悪いと仰せのシチさんですが、
勘兵衛様や久蔵殿と出会えたって運だけは,抜群に良いのでは?(苦笑)
めるふぉvv **
  **

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